すべて女性が主人公、再生を描いた短編集
小説「さいはての彼女」を紹介していく。
作品情報
著者:原田マハ
出版社:KADOKAWA(角川文庫)
ISBN:978-4-04-100642-9
感想
短編集
25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは程遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!? だが、予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした、珠玉の短編集。
原田マハ、「さいはての彼女」、KADOKAWA、2013年、裏表紙より引用
本書は短編集である。
それも、主人公が全員女性の。
個人的に、女性が描く女性の物語はありがたい。
キャラクターにリアリティがあって、男である私にとっては色々と勉強になる。
逆に、男が描く女性は、時々「都合が良すぎだろ」と思ってしまうことがある。
もう一つ共通点を上げるとすれば、「ほぼ全員の主人公たちが、旅に出ること」であろう。
『旅』と大げさに言ったものの、単なる旅行のようなものだ。
彼女たちが旅先で出会う人や風景が、大きな影響を与えることになる。
再生の物語
あらすじにもある通り、本書は『再生の物語』である。
要は、苦境に陥った人が、再び前を向いて歩き始める物語のことだ。
本書の主人公たちは、各々悩みを抱えていたり、何かに行き詰っていたりする。
そんな彼女たちが、ほんの些細なきっかけで立ち直り始めるのだ。
人との出会いだったり、風景だったり
『そんなことで!?』と思うほど、ちっぽけなことで復活してしまう。
この物語を読むと、上手くいかない時でも
「まあ何とかなるんじゃね」と思わせてくれる。
読みやすい
最近売れている作品は、どれも読みやすい。
読みやすいことが、ベストセラーになる最低条件のようだ。
そんな例に漏れず、本書も読みやすい1冊になっている。
文体や構成がわかりやすいことはもちろん、物語に没頭しやすいことも重要だ。
没入感は読み進める原動力になる。
本書は読みやすいだけでなく、ストーリー構成も素晴らしい。
短い物語にもかかわらずストーリーに起伏があり、読んでいても飽きないような仕掛けがされている。
短編集にして、この完成度はすごいと思う。
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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)
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