自分がこの本を手に取ったのが、20代前半でよかった。
30代前半で、しかも未婚で婚活をしている状態で読んでしまったら
さらなるダメージを受けてしまったことだろう。
二度と立ち上がれないくらいに。
本書「傲慢と善良」は結婚についての物語なのだ。
作品情報
著者:辻村深月
出版社:朝日新聞出版(朝日文庫)
ISBN:978-4-02-265059-7
感想
婚活
婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。彼女は、なぜ姿を消したのか。浮かび上がる現代社会の生きづらさの根源。圧倒的な支持を集めた恋愛ミステリの傑作が、ついに文庫化。(後略)
辻村深月、「傲慢と善良」、朝日新聞出版、2022年、裏表紙より引用
本書は、いわば結婚をテーマとしたミステリー作品である。
「なぜ、彼女は姿をくらませたのか」
突如失踪した婚約者の行方を、探し始めるところから物語が始まる。
彼女を追う過程で、今までの自分の恋愛、婚活について回顧することになる。
ただし読み終えた時、ミステリー作品とは感じないかもしれない。
あくまで心に残るのは「結婚」という二文字なのだ。
それだけ、語られる言葉や表現が鋭利で突き刺さる。
誰でも共感できるかな
本書を読んだのはこれで2回目。
文庫化されて直ぐと、感想を書くために読んでいる今回。
この二回の間には、大体半年くらいの期間があいている。
初めて読んだときに
「これは、複数回読んだら精神的にボロボロになる」
と思ったのだ。
それぐらい、物語に共感してしまった。
ダメージを負ってしまうくらいに。
一応言っておくが、私は婚活をしたことはない。
まだ、焦る年齢でもない、と思う。(そう思いたい)
しかしながら、物語に没入できたのである。
その理由は簡単で、
「人を見定める=値踏みする際の、心理描写がリアル」
だからであろう。
巧みな心理描写
婚活とは究極的には人を選ぶという行為だ(と思う。多分)。
そして、選ぶという段階に移る前にあるのが
「人を見定める、値踏みする」
ということだ。
人を値踏みするということは、誰しもやることだと思う。
初対面の人と会ったとき、気になる人ができたとき…etc.
それは恋愛に限らない。
職業、収入、学歴、容姿、服装,etc.
その人のことを知りたい、という純粋な興味から来る場合もあるだろう。
しかし、私は知っている。
邪な心から、他者と自分を比べることがあるということを。
人を値踏みするということに限らず
心理描写が巧みであることが本書の特徴だと思う。
特に、目を背けたくなるような心情に関しては。
だからこそ、多くの人にとって刺さる物語になっているのかもしれない。
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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)
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