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【小説レビュー】アニオタが「ハケンアニメ!」(著:辻村深月)を読んだ感想

小説レビュー「ハケンアニメ」 小説

先に言っておこう、私は生粋のアニオタである。

 

アニメを愛し、リアタイを求め、原作を追いかける男なのだ。

(今はアパートにテレビがないので「リアタイ=リアルタイムでアニメを見ること」はなかなか厳しいが…)

 

特に大学に入ってから、アニメに費やす時間が増えた。

 

サークルに入らず(※新入生のみんなは真似しないほうがいい)余りある時間を捧げたのである。

 

その結果、購入するグッズは増え、わずか6畳の部屋にフィギュアやポスターが所狭しと飾られている。

 

年々、生活スペースは狭くなる一方だ。

 

だが、後悔はしていない。

オタクであることに生きがいを感じているからだ。

 

 

さて今回は、そのアニメの制作側を描いた作品

ハケンアニメ」を紹介していく。

 

作品情報

著者:辻村深月

出版社:マガジンハウス(マガジンハウス文庫)

ISBN:978-4-8387-7100-4

 

実写映画が2022年5月20日に公開予定。

 

感想

ハケン=覇権

タイトルを見て

『ハケン』ってどういう意味なんだ?

と思った方は多いだろう。

 

『ハケン』とは『覇権』のことだ。

 

 

ネット上ではよく「今季の覇権は何だと思う」とか「この作品は間違いなく春アニメの覇権だ」という声をよく見かける。

 

同じシーズンに放送されていたアニメの中で、一番だと思うものを『覇権』と呼ぶのだ。

 

 

 

アニメファンたちは何をもって覇権を決めるのか。

 

もちろん、DVD・ブルーレイの売り上げや視聴率という数字もある。

だが一番大きいのは主観だろう。

 

私たちは

  • 何が心に響いたか
  • 自分にとって何が1番だったか
  • どのアニメが衝撃的だったか

を語り合うのだ。

 

プロデューサー・監督・アニメーター

本作では、3人の異なる人物を主人公に据えた連作短編集の形をとっている。

 

プロデューサー、監督、アニメーター

 

立場の異なる人物を物語の視点に置くことで、アニメ業界についてより多くの情報を伝えられるようになっていると思う。

 

 

 

アニメ制作と聞くと、作画を担当するアニメーターや演出を手掛ける監督などが浮かぶと思う。

 

だが、この作品で描かれるのは制作側だけにとどまらない。

 

 

例えば、アニメにまつわる観光事業。

近年、ファンの間では作品の舞台となった場所を訪れる『聖地巡礼』なるものが流行っている。

 

もともとは宗教的な言葉だったが、今では俗語としても使われているのだ。

 

 

本作では、そんな聖地巡礼にまつわる自治体側の苦労や努力も描かれている。

 

アニメ制作についてなんとなく知っている人でも、ここまではカバーしきれていない人も多いのではないだろうか。

 

某アニメとの違い

アニメ制作を描いた作品として有名なのがアニメ「SHIROBAKO」だろう。

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アニメファンならば一度は耳にしたことがある名作だ。

劇場版が製作されたことからも、その人気ぶりがわかると思う。

 

 

 

SHIROBAKOは本作「ハケンアニメ」と同様にアニメ制作を描いた作品である。

 

だが、描き方が異なる部分もかなりある

 

例えば恋愛要素

ハケンアニメには恋愛要素があるがSHIROBAKOにはない。

 

 

また、ハケンアニメはアニメ制作にとどまらず、グッズ制作・観光事業に至るまで幅広く描いている。

 

それに対しSHIROBAKOはアニメ制作現場の描写に注力している。

その分、制作側の描写は細かい。

 

個人的にはSHIROBAKOの方がリアリティがあると感じた。

実際にアニメを作っている人が、アニメ制作現場を描いているので当たり前なのだが…

 

 

逆に両方とも「アニメ業界をポジティブに描いている」という共通点もある。

 

例えば、アニメ業界の問題とされる給料と労働環境について、否定的に表現されていない。

紆余曲折ありながらも、最終的にはハッピーエンドになる。

 

個人的には好きなストーリーだ。

 

 

 

なんにせよ「SHIROBAKO」を楽しめた人は「ハケンアニメ」も楽しめると思う。

その逆もまたいえる。

 

ぜひ両方ともチェックしてみてほしい。

 

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