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【小説レビュー】「さよなら妖精」:米澤穂信

小説レビュー「さよなら妖精」 小説

海外からやってきた少女。帰国後、彼女が残していった謎…

小説「さよなら妖精」を紹介していく。

 

作品情報

著者:米澤穂信

出版社:東京創元社(創元推理文庫)

ISBN:978-4-488-45103-5

 

 

感想

日常に潜む謎。だが……

本作は『日常の謎』と呼ばれる類のミステリーだ。

途中までは。

「1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやってきた少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶の中に――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。(後略)」

米澤穂信、「さよなら妖精」、東京創元社、2006年、裏表紙より引用

 

 

米澤先生の代表作として頭に浮かぶのは、『古典部シリーズ』だろう。

京都アニメーション制作のもと、アニメ化されたことで有名だ。。

 

このシリーズから米澤作品を読み始めたという方も多いと思う。

私もそのうちの一人である。

 

 

日常の謎』として名高い古典部シリーズ。

この既刊をすべて読破してから、「さよなら妖精」を読み始めた私。

 

最初は、本作も日常の謎に類される物語だと思っていた。

だが、違った。

 

そう、途中まではそう思っていた

 

この作品がどのようなミステリーなのか。

それは自分の目で確かめてほしいと思う。

 

残る余韻

物語で登場するキャラクターたちは、高校3年生。

 

そして、私が初めて読んだのは大学に入ってすぐの事だ。

当時は今以上に没入したことを覚えている。

 

今よりも、高校生に近い精神を持っていたので、人物に共感できたのだ。

 

 

だからこそ、読み終えた時の衝撃も大きかった。

 

正直、油断していたのだと思う。

「日常の謎」という第一印象が大きかったからだ。

 

だからこそ、あんな結末を迎えるとは予想できなかった

 

 

本書を読むと、多くの人が無力感・脱力感を抱くだろう。

 

特に高校生くらいの人なら、大きな影響を受けると思う。

 

読み終えた時の虚無感。

それが私にとってこの作品を特別なものにしている気がする。

 

海外から来た少女

先ほど、この作品は『日常の謎』と呼ばれる作品だと言った。

 

だが厳密にいうと、『文化・考え方の差から生まれる謎』というべきかもしれない。

 

日常の何気ない出来事が、海外の文化という目を通してみることでミステリーになる。

 

 

マーヤは日本語は喋れるものの、日本についてほとんど知らない。

 

そんな彼女の聞き間違い・見間違い、無知から生まれる疑問が『謎』となる。

 

私たち日本人から見たら当たり前のことでも、彼女からすれば「?」でいっぱいの光景もあるだろう。

 

 

本書を読むと、何気ない出来事を別の視点から見ることができるかもしれない。

 

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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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