独特な文体で描かれる、子と母の物語。
小説「かか」を紹介していく。
作品情報
著者:宇佐見りん
出版社:河出書房新社(河出文庫)
ISBN:978-4-309-41880-3
感想
芥川賞受賞作家
著者である宇佐見りん(敬略称)は、小説「推し、燃ゆ」で第164回芥川賞を受賞した。
21歳での受賞ということで、注目を集めていたことを覚えている。
彼女の受賞は私にとって衝撃的だった。
同い年であったからである。
彼女が何を書いて、芥川賞を受賞したのか。
気にならないはずがない。
しかし、ハードカバーはなかなかに高価だ。
特に学生である私にとっては。
単行本1冊の値段で、文庫本が2、3冊買えてしまう。
購入か、文庫化を待つか。
そんな悶々とした日々を過ごしているときに、本作「かか」が文庫化されたのである。
デビュー作
「かか」は彼女にとってのデビュー作である。
本作で、第56回文藝賞と第22回三島由紀夫賞を受賞している。
2019年に単行本として出版され、2022年に文庫版が刊行された。
19歳の浪人生うーちゃんの深い悩みの種は、大好きな母親=かかだ。かかは孤独を苦に心を病み、酒を飲んでは荒れてしまう。かかを救いたいうーちゃんは、ある無謀な祈りを胸に熊野へと旅立ち――。(後略)
宇佐見りん、「かか」、河出書房新社、2022年、裏表紙より引用
作品において特徴的なのが、文体であろう。
主人公である「うーちゃん」が、物語を通して「かか弁」という方言を使っている。
必然的に、作品の文体も独特なものになる。
この方言は、本作を印象付ける重要なものだ。
だが、人によっては読みにくさを感じてしまうかもしれない。
特に最初のうちは。
実際私も、読みにくさを覚えることがあった。
だが読み進めていけば、不思議なくらい慣れてくる。
序盤は腰を据えて読書するのがいいかもしれない。
これは実体験なのか、それとも…
本書を読み終えた時の衝撃は凄まじかった。
「自分と同年齢の人が、こんな作品をかけるのか」と。
素晴らしい文章力と読者にページをめくらせるストーリー。
何より印象的だったのが、主人公の心情表現である。
何を経験したら、どんな努力をしたらこんな表現ができるのか。
実体験に裏打ちされたものなのば、まだ理解できる。
だが、そうじゃなかったとしたら…
それこそ、凄まじい。
一読者に過ぎない私には、想像を超えた領域である。
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