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【小説レビュー】「生きてさえいれば」:小坂流加

小説レビュー「生きてさえいれば」 小説

過去と現在をつなぐラブストーリー

小説「生きてさえいれば」を紹介していく。

 

作品情報

著者:小坂流加

出版社:文芸社(文芸社文庫)

ISBN:978-4-286-20200-6

 

小坂さんによる、映画化もされた著作「余命10年」↓

【小説レビュー】「余命10年」:小坂流加
不治の病にかかり、余命10年と言い渡された20歳の "茉莉"。そんな彼女の日々を描いた小説「余命10年」を紹介していく。本作は2022年に実写映画化予定。

 

あらすじ

大好きな叔母・春桜(はるか)が宛名も書かず大切に手元に置いている手紙を見つけた甥の千景(ちかげ)。病室を出られない春桜に代わり、千景がひとり届けることで春桜の青春の日々を知る。学内のアイドル的存在だった読者モデルの春桜。父の形見を持ち続ける秋葉。ふたりを襲う過酷な運命とは?――。魅力的なキャラクター、息もつかせぬ展開。純粋な思いを貫こうとするふたりを描いた奇跡のラブストーリー。

小坂流加、「生きてさえいれば」、文芸社、2018年、裏表紙より引用

 

感想

二つ視点で

本作は主に二つの視点、現在と過去の回想を中心に物語が進んでいく。

 

先に現在の状況が提示され、回想によってその理由が明かされるという形だ。

 

 

この構成をとっていることによって、物語の途中で登場人物への印象が大きく変わることがある。

 

まさに「違う視点で見てみると」が体現されたような物語だ。

 

 

あらすじを見ると、春桜という女性が主人公のように見える。

 

しかし、それは違う。

 

あくまで彼女はヒロインであり、回想では当時大学生の秋葉、現在では小学6年生の千景の視点で語られるのである。

 

重病を患った女性が登場する

という点は「余命10年」と同じだが、その女性自身が語り手であった。

 

この点が、本作との違いの一つであろう。

 

「余命10年」から来た人へ

2022年3月

小坂流加による小説「余命10年」の実写映画が公開された。

 

原作はよく知らないけど、出演している俳優に興味があったから見に行った

という人も多いことだろう。

 

映画の影響を受け、他の著作も読んでみたい、と思いこのブログにたどり着いた人もいると思う。

 

 

「余命10年」はいわば純愛の物語だ。(そう簡単に言い表せる作品でもないけども…)

 

すべては読者を感動させるため

そのためにキャラやプロットが作られているような印象を受けた。

 

 

本作「生きてさえいれば」は、一味違った作品になっている。

 

感動一直線というよりは、ある程度のリアルさ、特に人間関係面での感情のもつれをある程度現実的に描いていると感じた。

 

 

もし「余命10年」のように、儚くも素敵な物語を欲しているのならば、拍子抜けした読後感になってしまうかもしれない。

 

3作目が読みたかった

著者である小坂流加さんは既に亡くなられている。

 

「余命10年」を読んだときに、この事実を知った。

 

彼女によって、新たな物語が作り出されることはない、ということも分かっているつもりだった。

 

 

だが、本作を読み終えた今、彼女の新しい作品を猛烈に欲している。

 

刊行されることがない、とわかっていてもだ。

 

 

「余命10年」と「生きてさえいれば」は異なる種類の物語だ。

(厳密には同じ作品など存在しないが…)

 

1作目と2作目が大きく異なっていたからこそ、今なお3作目を読みたくなってしまう。

 

それだけ素敵な作家だったということだと思う。

 

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