小説

【小説レビュー】「もういちど生まれる」:朝井リョウ

10代、20代のリアルを描いた連作短編集

小説「もういちど生まれる」を紹介していく。

 

書籍情報

著者:朝井リョウ

出版社:幻冬舎(幻冬舎文庫)

ISBN:978-4-344-42171-4

 

あらすじ

彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遥。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。

朝井リョウ、「もういちど生まれる」、幻冬舎、2014年、裏表紙より引用

 

感想

等身大の大学生

本作は連作短編集であり、20歳前後の若者が主人公に据えられている。

 

巷では、大学生と思われる年代の若者である。

 

本作はそんな彼ら彼女らの日常を切り取ったような物語だ。

 

 

登場人物たちと同世代である私にとって、共感しかない作品だった。

特に大学生が主人公の話。

 

 

大学って、今思うと中途半端な時期だと思う。

 

社会人でもないのに、子供でもない。

中途半端な分だけ、自分が定まっていない分だけ不安を感じやすい。

 

中学、高校生の時とはまた違った種類の不安である。

 

作中では、そんな不安がリアルに描かれている。

 

同じ世代の人は、共感を覚える場面が多いだろう。

 

世代が上の人であっても、過去を思い起こし、共感できる作品になっているのではないだろうか。

 

自分が特別ではないことを確認する時期

ビル(イメージ)

大学を卒業したら、もう社会人。(ただし、大学院に行く人は別)

 

社会人になってしまったら、以前のような自由はない。

 

社会人として生きていくには、自分がただの普通の人間であることを自覚する必要があると思う。

 

 

大学に入る前、多くの人は希望に満ちた気分でいると思う。

 

「自分はなんにでもなれる、どこにでも羽ばたいて行ける」

のような感じだ。

 

ただ実際に入学してみると、現実を直視しざるを得ない。

 

普通になることを受け入れなければならない。

 

そういった意味で、大学は自分が特別でないことを意識させられる場所だと思う。

 

本書を読んでいると、今抱いている不安が自分だけのものではないと思わされる。

 

陽キャでも悩むんだなあ…

本作では、みんながイメージするような陽キャ大学生が登場する。

 

友達が多くて、考えるより先に行動して、ポジティブで明るい男子。

 

そんな彼でも悩みを抱えている。

 

 

正直、陽キャって何も考えずに生きてるんじゃ…

と思ってた時期もあった。(中学生くらいの時)

 

でも、当たり前なのだが、悩みのない人は存在しないと思う。

 

その人に応じた地獄があって、誰もが向き合っている。

 

そう考えると、陽キャも(私と変わらない)一人の人間なのだと実感させられる。

 

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