餓死という凄惨な殺され方をされた死体が発見された。
しかし被害者は恨まれるとは思えない、聖人のような人物だった…
実写映画化もされた小説「護られなかった者たちへ」を紹介していく。
作品情報
著者:中山七里
出版社:宝島社(宝島社文庫)
ISBN:978-4-299-00633-2
2021年に実写映画が公開された。
映画『護られなかった者たちへ』公式アカウント@mamorare_movie
あらすじ
仙台市で他殺体が発見された。拘束したまま飢え苦しませ、餓死させるという残酷な殺害方法から、担当刑事の笘篠は怨恨の線で捜査。しかし被害者は人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かばずにいた。捜査が暗礁に乗り上げるなか、二体目の餓死死体が発見される。一方、事件の数日前に出所した模範囚の利根は、過去に起きたある出来事の関係者を探っていた――。
中山七里、「護られなかった者たちへ」、宝島社、2021年、裏表紙より引用
感想
ミステリーというより…
あらすじやタイトルを読むと、この作品がミステリーだと思う人は多いだろう。
推理小説で有名な中山七里先生が著者であることも、そんな印象を与える一因かもしれない。
個人的に本作はミステリー小説というよりは、社会派小説の側面が強いと思う。
言い換えるならば、社会派小説を下地にミステリー要素が上乗せされているような感じだ。
もし本作を壮大なミステリー小説として読もうとしているのなら、期待外れになってしまうかもしれない。
生活保護について
つい最近『生活保護』というワードが話題になった。
それも、悪い意味で。
私がそうであったように、大半はその人を批判ばかりして、内実を知ろうとしなかったと思う。
そんな人にこそ本作を読んでみてほしい。
この作品では、『生活保護』とそれにまつわる貧困をテーマにしている。
生活保護を受給する人を描いているのである。
- 彼らが陥っている状況
- 手続きの際の問題点
- 受給できなかった者の貧困
など、読んでいるとまるで自分がその場にいるように錯覚させられる。
多くの人は読んでいるうちに、登場人物に共感するだろう。
そして、自然と考えが変わってくるのではないだろうか。
作品を通して社会問題を提起し、読者に訴えかける。
これが、作用説の醍醐味の一つだと思う。
中山七里さんの作品……
『中山七里の作品はミステリーの印象が強い』
と今まで言ってきた。
しかし、実は私この作品が『初中山七里』なのである。
いい作品に出合うと
「なんで、もっと早く読んでいなかったんだああ」
という思いになる。
そして、それが初めての作家だと
「なんで、この人の作品読んでなかったんだああ」
という気持ちにもなる。
今の私がまさにこの状態なのだ。
中山先生の著書を色々読み漁っていきたいと思う。
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