『教師』
という職業について、どんなイメージを持っているだろうか。
しんどい、きつい、辞めたい…
高校生のとき、将来について考えることがあったが
「教師になるのだけはやめておこう」
と思っていた。
当時テニス部員だった私は、顧問の多忙を垣間見ていたからである。
さて、本書はそんな教師について描いたミステリー
小説「教室に雨は降らない」を紹介していく。
作品情報
著者:伊岡瞬
出版社:KADOKAWA(角川文庫)
ISBN:978-4-04-100486-9
感想
臨時講師
教師についての物語といったものの、主人公は臨時講師だ。
森島巧は公立小学校で音楽の臨時講師として働く23歳。音楽家の親の影響で音大を卒業するも、流されるように教員の道に進んでしまう。腰掛け気分で働いていた森島だが、学校で起こる予想外のトラブルに巻き込まれていく。モンスターペアレント、いじめ、無気力教師、学級崩壊。子どもたちのSOSサインを見抜き、手探りで解決していく中で、彼が見つけた真実とは?
曇りがちな私たちの心を晴れやかにする希望の連作ミステリー。
伊岡瞬、「教室に雨は降らない」、KADOKAWA、2012年、裏表紙より引用
つまりは、アルバイト教師ということだ。
しかも新人の。
そんな人物を主人公に据えて、教師について描けるのか?
と思う人もいるかもしれない。
描けるのである。
むしろ、最適なキャラクター設定だと思う。
新人ということは、今まで別の世界にいた人間ということだ。
教師の実情をほとんど知らないとも言える。
そんな彼のレンズを通すことで、その職業の大変さや違和感が際立つのである。
教師ってこんな感じだったんだなぁ
この本を読んでいると、自然に自分の学生時代を思い出してしまう。
特に小学校時代。
自分の小学校、学年にはいじめがあり、学級崩壊もしたので、かなりリアリティがある。
(本当は共感できない方がいいが…)
かつては生徒側から見ていた景色。
教師側ではこんなことが起こっていたんだ、という感じだ。
特に自分の学年は荒れていたので、振り返ってみると先生方は大変だったろうな。
と思ってしまう。
時が経ち、教師の年齢へと近づいてきた今
共感を覚えるのは自ずと先生側である。
主人公の年齢が自分自身と近かったことも、その原因かもしれない。
数十年後、再読することがあったならば、今度は教頭や校長に思いを馳せてしまうのだろうか
コメント