文化祭と言えば、クラス・部活単位で行う催し物。
教室内にアトラクションを作ったり
食べ物を販売したり、作品を展示したり…
そして、文化祭を行うためには準備が必要不可欠。
というわけで、今回はそんな『文化祭の準備』を描いた話
古典部シリーズ第2弾「愚者のエンドロール」を紹介していく。
書籍情報
著者:米澤穂信
出版社:KADOKAWA(角川文庫)
ISBN:9784044271022
感想
4回目の正直
本書を読むのはこれで4回目である。
図書館で借りて読んだのが1回
書店で買って読み直したのが1回
ブログを書こうと思って読んだが、書けなかった時の1回
そして、今このページを書いている1回である。
小説には感想を書きやすいものと、そうでないものがある。
個人的にはメッセージ性がしっかりしている物語がありがたい。
それに乗っかり、自分の意見を書けばいいからである。
そういった意味で言うと、ミステリー作品は基本的に描きにくい。
ネタバレしないという方針で運営している以上、トリックに触れられないからである。
そして、本書は書きにくい部類だった。
作品自体は面白い。本当に面白い。
だが、書けなかった。
だから、こんな話をして文字数を稼いでいるのだ。
自主映画
「わたし、気になります」
文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したか? その方法は? だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!大人気青春ミステリ、<古典部>シリーズ第2弾!
米澤穂信、「愚者のエンドロール」、KADOKAWA、2002年、裏表紙より引用
古典部シリーズ第一巻、「氷菓」の時も思ったことだが

やはりアニメ版はすばらしい。
本書では自主映画を題材にしていることもあり、制作の手腕がより一層問われる内容だったと思う。
高校生による映画は、プロによるものとはかけ離れているからだ。
加えて、今回は演劇部などの普段から鍛錬をしている人の劇ではない。
単なる、文化祭のクラス制作なのだ。
したがって、この内容でアニメを作るには
「稚拙な映像制作、演技をアニメとして描く」
ことが必要になる。
例えば小説では、素人による演技のぎこちなさを文として表現するだけでいい。
細かい部分は読者の創造にゆだねればいいのだ。
ただし、アニメでは実際に演技しなければならない。
個人的には、その部分の作りこみが素晴らしかったと思う。
小説を読んだ人にはぜひ、見てほしい完成度だ。
ほろ苦い終幕
ハッピーエンドかバッドエンド、どちらが好みか。
こう問われたら、ハッピーエンドと答える人が多いのではないだろうか。
わざわざ物語を読む・見るなら気持ちよく終わりたい、という人が多い気がする。
(あくまで経験則です)
さて、米澤穂信先生の作品はどうなのだろうか。
個人的には、どちらでもないと思う。
強いていえば、バッドエンド寄りのハッピーエンドだろうか。
気持ちよく終わったことがあまりない気がする。
気持ちよく解決に導いた事件であっても、明かされる真実はどこかほろ苦い。
そしてその苦味が癖になるのである。
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