小説

【小説レビュー】「蹴りたい背中」:綿矢りさ

作り手ではなく読み手の技量によって、作品の評価が大きく変わるとよく言われる。

 

これはある意味真実だと思う。

 

そしてこの作品「蹴りたい背中」を読んだ私が、一番に感じたことである。

 

 

この作品は第130回芥川龍之介賞を受賞したことで有名である。

芥川賞は通常、同列に扱われる直木賞よりとても読みにくい(と思う)

 

直木賞が大衆小説、芥川賞が純文学に与えられる賞なので当たり前といえば当たり前であると思う。

 

個人的な印象として、読みにくい小説は読み手の技量が大きく問われる作品であると思う。大きく言えば読解力が問われるのだが、まず純文学は何を伝えたいのか曖昧なのである。

 

本作は一応青春小説と呼ばれるジャンルの作品だろう。

にもかかわらず分かりずらいのは、さすが芥川賞といったところである。

 

青春小説といえば紆余曲折ありながらも、最後には結ばれる男女のラブストーリーや

仲間との絆がやたらと強調された熱血のスポーツストーリーが思い浮かぶが、

この作品は違う。

 

どこか冷めていて、周囲から浮いている女子高生と

同じく浮いていて、いわゆるオタクである男子高校生の話である

 

主人公である彼女から見える景色は、モノクロで乾いている。

おそらく、筆者自身にこういう原体験があるのだろう。

 

それにしても、言語化するのが上手い。

多くの人が抱える漠然とした感情が文章から浮かび上がってくるような印象を抱いた。

 

さてここまで感想を述べてきたが、私が綿矢さんの作品を読むのはこれが初である。

 

本作の刊行から20年近くが経ち、多くの経験をした彼女がどのような作品を書くのか、さらに多くの作品を読んでみたい。

 

今回はここまで。

最後までご覧いただきありがとうございます。

 

 

※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています

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