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【小説レビュー】「余命10年」:小坂流加

小説レビュー「余命10年」(著:小坂流加) 小説

余命宣告された女性の生き様を描くフィクション

小説「余命10年」を紹介していく。

 

作品情報

著者:小坂流加

出版社:文芸社(文芸社文庫NEO)

ISBN:978-4-286-18492-0

 

 

2022年に実写映画化が公開された。


余命10年

 

あらすじ

二十歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にたおれ、余命は10年であることを知る。笑顔でいなければ、周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから、死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが・・・・・・。

小坂流加、「余命10年」、文芸社、2017年、裏表紙より引用

 

感想

説得力

本作の作者、”小坂流加” さんは文庫刊行時にはもう亡くなられている。

 

その事実を聞く前と後では、この物語の印象が大きく変わって見えた。

 

自分って、なんて単純なんだろう

物語の印象が作品それ自体ではなく、著者の境遇に左右されるとは。

 

 

ただ、それも仕方のないことなのかもしれない。(と思いたい)

 

今、健康に生きている私にとって『死』というものはイメージしづらい。

 

「あと10年後に必ず死ぬ、と言われた人がどんな思いで生活するのか」なんて猶更だ。

 

 

この作品は、余命宣告を受けながらも必死で生きている人たちを、知る手掛かりになるのかもしれない。

 

永遠な気がするが

余命宣告はある意味、自分の寿命の可視化だと思う。

 

寿命が可視化されると、人は悔いを残さないために必死になれるのかもしれない。

現状維持から脱却できるのかもしれない。

 

 

日常を何気なく生きていると、自分の存在が永遠のような気がしてくる。

 

だが、実際は違う。

誰もがいつかは絶対にこの世を去る。

 

そして、自分が死ぬときになって何も成し遂げていないことを後悔するのだろう。

 

 

もしマンガの世界のように自分の寿命が可視化されたのなら、もっといろいろなことに挑戦したり、自由になれたりするのかもしれない。

 

実写映画化される

本作はなんと2022年春に実写映画化されるらしい。

 

このことで私が懸念していることが一つある。

それは、本作を『絶対泣ける』とか『思わず泣ける』のような謳い文句で宣伝をしそうなことだ。

 

『絶対泣ける』という宣伝が頭にあると、ほぼ確実に泣けない。

こう感じている人はかなり多いのではないだろうか。

 

さらに、お涙頂戴のような宣伝をされてしまうと、そもそも見る気がなくなってしまう。

 

一部の界隈だけで盛り上がるような作品にならないでほしいと思う。

 

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