小説

【小説レビュー】大学生が「バッテリー」(著:あさのあつこ)を読んだ感想

小説レビュー「バッテリー」 小説

小中学生の心情を丁寧に描いた児童向け野球作品

小説「バッテリー」を紹介していく。

 

書籍情報

著者:あさのあつこ

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-372101-6

 

本作は第1巻。(全6巻、完結済み)

 

実写映画化(2007年)、テレビドラマ化(2008年)、テレビアニメ化(2016年)されている。

 

感想

これは児童書なのか

まずは、裏表紙に書かれているあらすじを見てみよう。

 

「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。――関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」

中学入試を目前に控えた春休み、岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持ち、それゆえ時に冷酷なまでに他者を切り捨てる巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。巧に対し、豪はミッドを構え本気の野球を申し出るが――。

『これは本当に児童書なのか!?』

ジャンルを越え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の文庫化!

はやみねかおる、「バッテリー」、KADOKAWA、2003年、裏表紙より引用

 

まさに

これは児童書なのか?

が本書の第一印象である。

 

児童書の定義を、『12歳くらいまでの文学』とするならば、本書は児童書ではない思う。

 

もしこの登場人物たちに共感できる小学生が存在するならば、その人は超人である。

 

それくらい、主人公の考え方が大人びているのだ。

 

小学生というよりはむしろ中学生、もしくは高校生が読むのにちょうどいい内容だと感じた。

 

 

思い返してみれば私も、小学生の時読んだ記憶がある。

しかし、内容は覚えていない。

 

おそらく、共感できる部分が少なかったからこそ印象に残っていないのだろう。

 

 

児童書というジャンルに位置するが、限りなく一般文学に近い

というのが、本書の特徴である。

 

野球の物語なのか?

タイトルからも分かる通り、本作は野球を題材にした作品だ。

 

 

だが、第1巻を読み終えた後だと、そのテーマが飾りのように見えてくる。

 

バッテリー」という名の皮をかぶった、人間の物語に見えてくるのである。

 

 

みなさんは野球小説と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

 

  • 他より秀でた能力を持つ主人公が、甲子園優勝を成し遂げる
  • 初心者が驚異的なスピードで成長し、輝かしい成績を残す

などだろう。

 

どれも野球が主体で、野球とともに物語が進んでいくのである。

 

 

だが、本作は違う。

 

あくまで人間ありきで、ストーリーを円滑に進めるために野球が存在している。

 

人間の心情、関係性などに重きを置いているように感じるのだ。

 

特にこの巻は中学生になる前(=小学生)の話で、イントロダクション的な意味合いが強いのでこう感じるだけかもしれない。

 

女性が書いているという衝撃

主人公の巧は小学6年生。

 

まさに思春期が始まったころという感じだ。

 

そんな彼の心情が本当に上手に描かれている、私が思わず共感してしまうくらいに。

 

 

そんな中驚きなのが、作者であるあさのあつこさんが女性であるという事実だ。

 

これほどまで、小中学生男子の胸の内を理解していることに驚きを隠せない。

 

 

自分が子供のころ感じていたことなんて、親には筒抜けだったのかもしれない。

 

関連書籍

 
アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています

コメント

タイトルとURLをコピーしました