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【小説レビュー】「いまさら翼といわれても」:米澤穂信 -古典部シリーズ⑥-

小説レビュー「いまさら翼といわれても」 小説

高校二年になった奉太郎たち古典部部員。

ふたりの距離の概算」では、新入生について語られた。

 

果たして、彼ら自身の変化はどうなのだろうか。

 

本書では、それが少しばかり明らかになる。

 

 

古典部シリーズ第6弾

小説「いまさら翼といわれても」を紹介していく。

 

作品情報

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-108164-8

 

感想

まだアニメ化されていない話

「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」夏休み初日、おれほうろうにかかってきた 〈古典部〉部員・ばらからの電話。合唱祭の本番を前に、ソロパートを任されているというたんえるが姿を消したと言う。千反田はいま、どんな思いでどこにいるのか――会場に駆けつけた奉太郎は推理を開始する。千反田の知られざる苦悩が垣間見える表題作ほか、謎解きを通し〈古典部〉メンバーの新たな一面に出会う全6編。シリーズ第6弾!

米澤穂信、「いまさら翼といわれても」、KADOKAWA、2019年、裏表紙より引用

 

個人的に古典部シリーズの中で、一番好きな巻である。

 

 

内容が好きなのは言うまでもない。

特に表題作「いまさら翼といわれても」と「鏡には映らない」は印象深い。

 

そして、短編集だからというのもあるだろう。

話の種類が多ければ、それだけ好きなものを見つけやすい。

 

 

 

だが、他者より先を知っているという優越感というのも否定できない。

 

そう、この巻はまだアニメ化されていないのだ。(「連峰は晴れているか」は除く)

 

人が知らない、素晴らしいものを知っている。

これほど楽しいことはなかなかない。

 

そして、それを人に教えたくなるのだ。

 

そう、今まで古典部シリーズを紹介してきたのは、この1冊を紹介するためである。

 

そんなわけで今この記事を読んでいる皆さんには、ぜひ手に取ってほしい。

 

古典部部員たち

 

本書を読むと、古典部部員たちをより知ることができる。

 

例えば、主人公・折木奉太郎

 

彼の信条である

やらなくてもいいことなら、やらなければいけないことは手短に

 

如何にして、この考えにたどり着いたのか。

 

『長い休日』という話で、その顛末が明らかになるのだ。

彼の過去の話である。

 

 

表題作『いまさら翼といわれても』では、千反田のひそかな苦悩が、

そして、『わたしたちの伝説の一冊』では、摩耶花の決意と里志の決心が、それぞれ明かされる。

 

 

あらすじの通り、本書は「登場人物の掘り下げ」というテーマで書かれていると思う。

 

古典部部員の新たな一面を知ることで、シリーズをもっと好きになれるかもしれない。

 

千反田える

 

折木奉太郎の視点で物語を見ることは、千反田えるを知ることであるような気がする。

 

彼は古典部シリーズの探偵役であり、かなりの推理力の持ち主だ。

言葉と行動から、予期せぬことを推察してしまう。

 

人の様子を観察して、色々なことを突き止めてしまうのだ。

 

 

とりわけ、千反田からはいろいろなことを汲み取っていると思う。

 

彼女のことについてはよく気付く。

 

 

そんな彼は今回、千反田の新たな一面を知る。

 

そして、そこに至る経緯と反応こそが彼の変化の象徴のようである。

 

この巻を読んだ後、第1巻「氷菓」を読んでみてほしい。

高校入学直後の彼からは考えられない行動をとっている。

 

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その他

 
 

(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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