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【小説レビュー】「dele」:本多孝好

小説レビュー「dele」 小説

死後、見られたくないデータを削除する。

小説「dele」を紹介していく。

 

作品情報

著者:本多孝好

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-106805-2

 

全3巻(2022年5月5日現在、本書は第1巻)

 

 

実写ドラマ化されている。(全8話)

原作小説とはストーリーがかなり異なるので、小説を読破した人にもオススメ。

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#1

 

感想

死後、データを削除する

「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」。それが『dele.LIFE』ディーリー・ドット・ライフの仕事だ。淡々と依頼をこなす圭司けいしに対し、新入りの祐太郎ゆうたろうはどこか疑問を感じていた。詐欺の証拠、謎の写真、隠し金――。依頼人の秘密のデータをのぞいてしまった2人は、思わぬ真相や事件に直面してゆく。死にゆく者が依頼に込めた想い。のこされた者の胸に残る記憶。生と死、記録と記憶をめぐる、心震わすミステリ。

本多孝好、「dele」、KADOKAWA、2018年、裏表紙より引用

 

文字通りデジタルの遺品を『デジタル遺品』と呼ぶらしい。

 

写真、動画、文書データ、SNSアカウント、ブログ、ネット証券口座、メールアカウント、サブスクリプションサービス……

その種類は多岐にわたる。

 

それにしても種類が多い。

このほかにも、気づいていないだけでデジタル遺品となるものは多いのかもしれない。

 

 

デジタル端末やアカウントにパスワードがかかっていることが多いため、本人にしか管理ができない。

 

なるほど、大変そうである。

 

 

今や高齢者もスマホを持つ時代。問題になってくるのも頷ける。

 

 

さて、本作はそんなデジタル遺品にまつわる物語だ。

 

誰にも見られたくないデータ』と聞いて、邪なものを想像する人も多いだろう。

 

本作で描かれるのは、果たしてそんなデータなのだろうか。

 

読みやすい

記事執筆時点で「dele」シリーズは3巻刊行されている。

 

読み終わったとき、率直に『読みやすい』と感じた。

なぜ、こう感じたか理由付けしてみる。

 

①連作短編集

シリーズ通して連作短編集の形をとっている。

 

短編集の形をとっているが、1つ1つの物語が密接に結びついているのだ。

 

 

この形式によって、読書の区切りがつけやすい。

なおかつ、1篇読み終えるごとに達成感が生まれ、読み進める原動力になる思う。

 

意外な結末

収録されているどの物語も、意外な形で幕を閉じる

 

そう簡単には物語が終わらないのだ。

 

 

ストーリーの途中で読者は予想を立てることになる。

 

誰が、いつ、どこで、どんなことをしたのか。

そして、それがどんな結末をもたらしたのか。

 

おそらく、その予想は当たらない。

 

 

その結果、時間を忘れて読書に没頭するようになる。

真実を知るために、そして真実に裏切られる快感のためにページをめくるのだ。

 

会話文が多い

今までの経験上、会話文が多い小説は読みやすいことが多い。

 

すなわち、説明が少ない物語だ。

 

 

「dele」もそんな作品の一つに挙げられると思う。

 

おまけに主人公・祐太郎が使うのは若者言葉に近いので尚更読みやすい。

 

読書が苦手な人は、会話文が多いということを意識すると手に取りやすいかもしれない。

 

実物よりデータ

最近は、実物よりデータの方が親しみがある

という多いかもしれない。

 

 

例えば、音楽

 

友達から

「このバンドの曲オススメだから、聞いてみて」

と言われたらあなたはどうするだろう。

 

多くの人は、自分が契約しているストリーミングサービスを検索するか、Youtubeを開くかのどちらかだろう。

 

一昔前なら、近場のレンタルショップに行ってCDを借りに行く、と答える人が大半だったかもしれない。

 

 

写真データもそうだろう。

 

写真を現像したことがある、という若者はほとんどいないのではないだろうか。

 

多くの人がスマホを持つようになった今、お金をかけてまで実物が欲しいという人は少ないのと思う。

 

 

こんな風に考えてみると、『デジタルデータ』に親近感がある若者の方が、本作に没入できるのかもしれない。

 

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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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