小説

【小説レビュー】「神様のカルテ」:夏川草介

『24時間、365日対応』の地方病院で働く内科医を描く

小説「神様のカルテ」を紹介していく。

 

作品情報

著者:夏川草介

出版社:小学館(小学館文庫)

ISBN:978-4-09-408618-8

 

2011年・2014年に実写映画化、2021年にテレビドラマ化された。

 

感想

医者は大変だ

本作の主人公、栗原一止内科医

 

勤め先は24時間、365日対応の地方病院。

それに加えて慢性的な医師不足を抱えている。

 

それゆえ毎日休む暇なく、時には40時間連続勤務をすることもあるくらいだ。

 

 

この部分を聞くだけで、医師という仕事は大変そうである。

 

だが、それだけではない。

(本作で描かれている)医師は患者の死と向き合わなければならないのである。

 

 

「もし自分がこの病院で勤務していたら…」ということを考えてみると、

人の死を事務的に処理してしまうかもしれない。

 

目の回るような勤務の中で、向き合う時間を作ることは難しい。

 

 

だが栗原一止は違う。

 

口下手で感情表現に乏しい部分を抱えながらも、患者一人一人に向き合おうとする。

 

これは、そんな医者の物語である。

 

奥さん可愛いなあ、いいなあ

主人公栗原一止には、妻がいる。

ハルこと、栗原榛名である。

 

 

正直言おう、この奥さんメチャクチャ可愛い。

 

今まで何度もこの作品を読んできたが、毎回思う。

「一止よ、羨ましすぎるぞ」と。

 

 

読んでいると

「結婚してえええええ」という気持ちに襲われる。

 

それくらい、魅力的なキャラクターなのだ。

 

 

文章という限られた情報の中で、これまでに魅力的なキャラクターを描ける作者さん。

 

本当にすごい。

 

読みやすい・没入しやすい

栗原一止は、夏目漱石を敬愛している。

 

彼の視点で進んでいくこの物語の文体も、夏目漱石調である。

 

 

本家本元の夏目漱石の著書は総じて読みにくい。

(例えば有名な、「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」なども慣れない人には、読みにくいと思う)

 

これは仕方がないことだと思う。

昔の小説には、今ではあまり使われなくなった言葉が登場し、考え方も違う。

 

 

では、「神様のカルテ」はどうだろうか。

 

端的に言うと、かなり読みやすい。

夏目漱石調で物語が進んでいくのにもかかわらず、だ。

 

これは本当にすごいことだと思う。

 

普段、本を読まない人にもオススメできる1冊だ。

 

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