『特殊な能力を自覚した人間が、大きな流れに立ち向かう。』
伊坂幸太郎による小説「魔王」を紹介していく。
作品情報
著者:伊坂幸太郎
出版社:講談社(講談社文庫)
ISBN:978-4-06-276142-0
コミカライズ化された。(全10巻)
あらすじ
会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいて行った。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。
伊坂幸太郎、「魔王」、2008年、裏表紙より引用
感想
「魔王」は中学のころ習ったあの「魔王」
中学校の時、音楽の授業で習った『魔王』。
シューベルトが作ったこの曲。
作中でも言及されているが、どうやら本小説の名前の由来らしい。
どうして『魔王』という名をつけたのか、は小説を読めば分かる。
ここでは言及を避けようと思う。
本作を読んで
「へえ、あの曲に対してこんな考え方もできるんだなあ」
と感じた。
中学の時、何も考えずに学んでいた曲。
だけど、人によっていろいろな考え方があって、そこから生まれる物語がある。
既存の考え方に、新たな見方が付加される。
これが、読書の醍醐味の一つなのかもしれない。
大きな流れ
最近、どうにもできないことをよく考えてしまう。
自分の将来に対して先行き不安があること、そして現状暇を持て余していることが原因であろう。(現在大学休学中。)
人は物事に優先順位をつけている。
仕事が死ぬほど忙しい時は「どうやって仕事を乗り越えるか」を第一に考えるだろうし、学生はテスト前「いかに赤点を回避するか」を目標にするだろう。
通常、考えてもどうにもできないことは後回しにするはずだ。
- 死生観
- 国の将来
- 世界で起きている戦争
みたいなことは、普通頭に浮かばないと思う。
ただ、時間があるとそれは別だ。
ふと気づいたときに(例えば寝る前とか)そういうことを考えがちだし、それが自然だと思う。
そのせいで心が壊れてしまうこともある。
さて、本作では
『どうにもならない』大きな流れにどうアプローチするのか
ということがテーマの一つになっている。
はたして、流れに逆らった人がどのような結末を迎えるのか。
ぜひ、確認してみてほしい。
「モダンタイムス」の前日譚
本作には続編に位置づけられる作品「モダンタイムス」がある。
「モダンタイムス」では、「魔王」の50年後の世界が描かれている。
そろぞれの話は独立しているので、別々の物語として読むことができる。
だが、時系列はつながっているため、両方読むと新たな発見があるだろう。
どちらかしか読んでいない人は、ぜひ両方読んでみてほしい。
二作品を1つの物語として楽しむことができるかもしれない。
「モダンタイムス」もレビューしてるよ

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