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【小説レビュー】「ふたりの距離の概算」:米澤穂信 -古典部シリーズ⑤-

小説レビュー「ふたりの距離の概算」 小説

アニメ氷菓

全22話を見終えて、後に彼らが進級することを想像できた人がいるだろうか

 

同じ時間、同じような関係で物語は続いていくと思った人が多いかもしれない。

 

時間が経過するのは当たり前だというのに。

 

 

そう彼らは2年生になった、この巻で。

そして必然的に新入生も登場する

 

 

古典部シリーズ第5弾、小説「ふたりの距離の概算」を紹介していく。

 

作品情報

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-100325-1

 

コミカライズ化されている。

 

感想

春だ、進級だ、新入生だ

春を迎え高校2年生となったほうろうたちの〈古典部〉に新入生・おお日向ひなたともが仮入部する。たんえるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない――。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する! 〈古典部〉シリーズ第5弾!

米澤穂信、「ふたりの距離の概算」、KADOKAWA、2012年、裏表紙より引用

 

なんと奉太郎たち古典部員は高校2年生へ。

そう、彼ら進級したのだ。

 

 

特に学園ものの物語に対しては、どうしても

「ずっと同じ学年、時が止まったままストーリーが進む」

という幻想を抱いてしまう。

 

こう感じるのは私だけであろうか。

それとも、心のどこかで願っているからなのか。

 

 

今までも作中に春から夏、そして冬という一年の時間の流れはあった。

 

だが、「学年が上がる」ということは特別だ。

それが他人の事であっても、時間の経過を意識せざる得ない

 

 

加えて、古典部の面々も変わらないと思っていた。

 

シリーズ第1巻「氷菓」を読み終えた時

「このシリーズは、4人が中心となって進んでいくんだな」

不思議とそう感じたのである。

 

だが、現実は違う。

人間関係は絶えず、変化していくのだ。

 

仮入部員

 

その新入生というのが、大日向友子である。

 

本書「ふたりの距離の概算」において、最も重要な人物であり

当たり前だが最も新しい人物だ。

 

そんな彼女が、なぜ入部を取りやめたか

それを推理する。

 

 

シリーズ当初の奉太郎なら、こんなことはしなかっただろう

「まあ、そういうこともある、仕方ない」

という風に簡単にあきらめてしまうと思う。

 

だが、1年以上古典部で過ごし、多少なりとも部員の面々を知った今

彼は全く違った行動をとることになる。

 

 

「千反田はそんなことをしない」

そう思えるくらいには、彼女の事を理解した。

 

そして、マラソン大会という場所でも、推理をする。

 

奉太郎は本当に優しいな、と思う。

 

「ふたりの距離の概算」

 

ふたりの距離の概算

このタイトルから連想されることは何だろう。

 

マラソン大会という舞台を考えると

二人は何メートルくらい離れているか

ということになるだろう。

 

そして、それは当たっている。

実際作中では奉太郎が、自分とほかの人との距離を計算しながら走ることになるのだ。

 

当然といえば当然だが、走っているので頭は回らない。

だから概算である。

 

 

だが、タイトルの意味はこれだけではないと思う。

 

 

 

米澤先生が付けるタイトルは、予想外の意味を持っていることがある。

 

読み終えた時

「なるほど、だからこの題名なのか」

腑に落ちるほどに。

 

そして、本書もその一冊に含まれるような気がする。

 

ぜひ、タイトルを念頭に置いて読んでほしい。

 

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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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