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【小説レビュー】「遠まわりする雛」:米澤穂信 -古典部シリーズ④-

小説レビュー「遠まわりする雛」 小説

シリーズ初の短編集。時間の隙間を埋める物語。

古典部シリーズ第4弾、「遠まわりする雛」を紹介していく。

 

作品情報

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-427104-6

 

2012年に京都アニメーションによって全22話のアニメが製作された。

 

コミカライズ化されている。

 

感想

シリーズ初の短編集

おれほうろうは〈古典部〉部員・たんえるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する――。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか〈古典部〉を過ぎゆく1年を描いた全7編。〈古典部〉シリーズ第4弾!

米澤穂信、「遠まわりする雛」、KADOKAWA、2010年、裏表紙より引用

 

本書は、古典部シリーズ初の短編集である。

しかも、7編も収録されていて大ボリューム。

 

そして、それぞれが別の内容を題材にしている。

学校に伝わる怪談、校内放送、初詣、バレンタイン,etc.

 

加えて、それぞれ趣向の異なるトリックが仕掛けられていて面白い。

 

本書の中に、お気に入りの話を見つけられたらいいなと思う。

 

アニメとの違い

 

京都アニメーションによって制作されたアニメは、この巻までの内容となっている。

(※6巻「いまさら翼といわれても」に収録されている『連峰は晴れているか』もアニメ化されている)

 

 

アニメを見た人が原作小説を読むと驚くかもしれない

順序が違うからだ。

 

例えば、本書に収録されている「やるべきことなら手短に」という話。

 

これは、アニメでいうと第1話において描かれている。

全22話のうちの最初の話だ。

 

対して、小説では第4巻。

 

 

おそらく、アニメは時系列順に制作したのではないかと思う。

あくまで、アニメ制作当時に刊行されていた物語の中で、という意味だが。

 

 

「やるべきことなら手短に」以外の話も、同様である。

 

それぞれが、今までの出来事の合間を埋めるような形になっている印象だ。

 

アニメから来た人は困惑する可能性があるので、注意してほしい。

 

遠まわりする雛

 

本書の最後に収録されている「遠まわりする雛

この1篇はかなり印象的だ。

 

アニメ第1期の最終話に、持ってきたのも頷ける内容である。

 

 

 

個人的には、「遠まわりする雛」はこの先のストーリーの暗示になっていると思う。

 

というのも、この巻より後、つまり『古典部シリーズ』第6巻に対となるような物語が収録されているからだ。

 

そう6巻の表題作「いまさら翼といわれても」である。

この物語も巻の最後に配置されている。

 

著者である米澤穂信さんが、意図をもって構成をしたと考えざるをえない。

 

 

 

ネタバレをしない方針で書いているので、詳しくは書けないが

この二つの話は『千反田える』に関するものだ。

 

そして、「遠まわりする雛」は古典部員が1年生の時の出来事。

対して、「いまさら翼といわれても」は2年生の時のことである。

 

 

気になった人はぜひ読んでもらいたい。

私が言いたいことを理解ってくださるのではないだろうか。

 

 

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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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