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【小説レビュー】「満願」:米澤穂信 -ミステリーと人間ドラマ-

小説レビュー「満願」 小説

 

 

書誌情報

著者:米澤穂信

出版社:新潮社

ISBN:978-4-10-128784-3

 

 

2014年に単行本として刊行され、2017年に文庫化されました。

 

ジャンルがミステリーの短編集で、6編の物語から構成されています。

 

第27回山本周五郎賞を受賞しています。

 

そのほかにも「ミステリが読みたい! 2015年版」、「このミステリーがすごい!2015年版」など数々の賞を受賞しており、かなり評価を得ている作品といえます。

 

2018年には6編のうち3編がテレビドラマ化を果たしています。

 

第1話(Amazon)↓


第1夜「万灯」

 

あらすじ

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短編集の金字塔。

(米澤穂信、『満願』、新潮文庫、裏表紙の説明より引用)

 

感想

味わったことのない読後感

この作品を読んでまず一番に感じたこと。

それは読後感の凄まじさだと思います。

 

全六篇ある物語のどれもが異なる趣向で描かれていて、どれを読んだとしても自分の中に爪痕を残します。

 

恐怖、驚嘆、不安、戦慄、焦燥など、様々な感情がリアルな質感を持って渦巻いてきます。

 

あなたが本作を読んだとき、はたしてどんな感情を抱くことになるのでしょうか。

 

人間ドラマとミステリーの調和

個人的な印象ですが、最近売れているミステリー小説は純粋なミステリーとはいいがたいと思います。

 

ミステリーとしての質が低い、と言っているわけではありません。

 

推理小説としてのクオリティーを保ちながらも、そこに人間の感情や人と人との関係性、さらにその関係性から織り成されるドラマが上手くはめ込まれていると感じます。

 

私も謎だけを追い求める作品より、人間ドラマが上手く調和した作品を好む傾向があります。

 

人の物語が組み込まれている方が、感情移入しやすく物語に没入しやすいのかもしれません。

 

感想を書くのが難しかった

この作品は感想を書くのが本当に難しかったです。

 

自分の読解力の低さや、ミステリー作品への知識が欠如していることが原因です。

 

作品自体が面白く先が気になる、という単純なことはわかります。

 

ただ、具体的に何が面白くなぜ先が気になるのか、ということを文章化することはかなり難しいです。

 

自分の未熟さを嘆くばかりです。

 

 

昨今ではSNSなどの発達により、わかりやすい作品が大衆に受け入れられているような印象を受けます。

 

本作のように、感想を言葉にしたくともできない、という作品は影に潜んでしまう可能性があります。(本作は世間から多大な評価を受けていますが….)

 

自分の力で物事を読み解き、それを言葉として具現化する。

私はそのトレーニングとしてこのブログを運営している、という目的もあります。

 

このブログを通して、自分が成長できたらいいなと思っています。

 

 

最後は話がそれてしまいました、すみません。

本作はミステリーとして権威のある賞において、三冠を達成するという評価を受けた本です。

 

興味のある方は是非読んでみてください。

いい意味で期待を裏切ってくれる作品だと思います。

 

 

参考文献

[1]米澤穂信、『満願』、新潮文庫

 

※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています

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