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【小説レビュー】「クドリャフカの順番」:米澤穂信 -古典部シリーズ③-

小説レビュー「クドリャフカの順番」 小説

高校の文化祭を舞台にしたミステリー、古典部シリーズ第3弾

小説「クドリャフカの順番」を紹介していく。

 

作品情報

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

ISBN:978-4-04-427103-9

 

2012年、全22話のテレビアニメが放映された。

 

感想

文化祭

 

文化祭と言えば、友達と一緒に過ごす楽しい時間。

 

であるのは間違いないのだが、これが結構めんどくさい

一緒にいる人を探さなければならないし、時間が合うとも限らない。

 

文化祭自体は楽しい。

だが、時間を潰す人を探す手間。

 

割と憂鬱だったのは確かだ。

 

 

そういった意味で、奉太郎の過ごし方は素晴らしい。

人がほとんど訪れない部室で、客を待ちながら店番

 

友達が少ない人にとって、これ以上に労働環境がいい場所はないだろう。

もちろん、文化祭が終わるまで続けばという話ではあるが…

 

待望の文化祭が始まった。だがおれほうろうが所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲――。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう! 目指すは文集の完売だ!! 盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに……。大人気〈古典部〉シリーズ第3弾!

米澤穂信、「クドリャフカの順番」、KADOKAWA、2008年、裏表紙より引用

 

というわけで、今回も事件に巻き込まれる奉太郎。

 

古典部シリーズ』の探偵役は彼だ。

とはいっても、大多数が想像するような探偵ではないのだが…

 

 

そんなこんなで、今回も人が死なない学園ミステリーが幕を開ける。

 

多視点

 

古典部シリーズ第1巻、第2巻ともに、主人公『折木奉太郎の視点のみでストーリーが語られてきた

 

しかし、本書では複数の視点で物語が進んでいく。

 

奉太郎はもちろんのこと、他の古典部員

(具体的には、千反田える、福部里志、伊原摩耶花

を含めた4視点で話が進んでいくのだ。

 

 

これまでの話から、古典部員がどんな人となりをしているか、曖昧ながらも理解をしていると思う。

 

だが、この「クドリャフカの順番」によって、それがより明確となる。

 

 

なぜなら、それぞれが一人称視点であるからだ。

 

彼ら彼女らが、何を考え、どんな考えで言葉を発したかがよく分かる。

 

 

本書を読めば、古典部の面々をより知ることができるかもしれない。

 

高校生活は薔薇色か

高校生活と言えば薔薇色、薔薇色と言えば高校生活、と形容の呼応関係は成立している。

米澤穂信、「氷菓」、KADOKAWA、2001年、p7

 

古典部シリーズ第1巻で奉太郎が語ったことである。

 

多くの人にとっては共感できる内容だろう。

特に、高校時代を過去とできる人々にとっては。

 

 

ふと立ち止まって思い出すのは、楽しく美しい高校時代だ。

 

「あの頃はよかったな」

と口に出す人もいるかもしれない。

 

 

だが、本当に薔薇色だけなのだろうか。

今や美化されてしまった過去であっても、どこかくすんだ色があったのではないだろうか。

 

 

本書を読んでいると、そんなことを思わずにはいられない。

 

薔薇色に隠れてしまった自分の愚かさや未熟さを。

そして、それによって生じた失敗を。

 

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(※アイキャッチの書影画像は版元ドットコムから利用しています)

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